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が、しかし。
全く彼の姿が見つからない。まるで私の死にたい思いを察しているかのようだ。
人混みに舌打ちする。
仕方ないので直接会って話すことを諦め私は校舎の隅で彼に電話をかけた。
「もしもし?」
ワンコールで彼は電話に出る。
「今どこにいんの?」
少しの間が空いて、
「陰キャは人混みに紛れるのがうまいんですよ」
なんて返してくる。
彼は人混みが苦手だ。わざわざそんなことはしないだろう。だけど彼には彼の事情があるんだろう。わざわざ聞き出したりなんてしない。これが私たちがうまくやっていける秘訣だった。それにこれから死ぬやつが無責任に相手の話を聞かない方がいいだろう。彼に何かあったとしてこれから時間をかけて寄り添うことも解決の手助けをすることもできないのだから。そう思って会話を続ける。
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