プロローグ

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プロローグ

「定命の者はいつになったら学ぶのだ。我に何度挑もうが、その差は広がるばかりだと」  黒いローブを纏い、頭部に角を生やした異形の男が杖を掲げると、無数の魔力塊が放出された。  魔力塊が高速で飛翔して勇者たちに迫り、次々に爆発する。 「うわあああーっ!?」  爆風によって勇者たちが吹き飛ばされる。  こうして地面に寝転がるのは何度目だろう。そのたびに勇者たちは立ち上がるが、この日のために鍛え上げた自慢の装備は砕け、体にもだいぶダメージを受けていた。 「くっ……。力が違いすぎる……」 「これが魔王、勝てるはずがない……」 「やっぱり人間が挑むなんて無謀だったのよ……」  魔王に立ち向かおうとした人間たちは、口々に嘆きの声を上げた。  そんな中、勇者が彼らに告げる。 「……ここは俺に任せろ。お前たちは逃げるんだ」 「おい、何のつもりだ!」 「ヒデオ、お前だけを置いていけない!」 「そうよ! みんなでここまで来たのに!」  勇者の名はヒデオ。仲間三人とともに魔王討伐の旅に出て数年、これまで数々の戦功を挙げてきた。  ヒデオは立ち上がって、ふらつきながらも仲間をかばう位置についた。 「このままじゃ全滅する。俺が犠牲になるから、お前たちだけでも生きてくれ」 「ヒデオ……! そんなこと言うなよ!」 「どうせ俺は異世界から来たよそ者だ。帰るところもなければ、家族もいない。だがお前たちは違うだろ。この世界に生まれ、国には帰りを待つ人たちがいる」 「…………」  見捨てられるほど浅い付き合いではないが、これに仲間たちは何も返せなかった。
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