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「おい、起きろ」
ヒデオは小声でそう言い、蝦高の布団をはがした。
「ン……ああん。なんだよ……」
「お前に聞きたいことがある」
「誰だてめえ……どうやってここに入った?」
蝦高はすぐに異常事態に気づく。
声を掛けてきたのは明らかに刑務官ではなく、自分に対して敵意を持っていることを理解した。
「うおっ……」
蝦高は急に息苦しくなった。
首に何かを取り付けられたのだ。
「おい、なんだこりゃ」
「魔法アイテム『尋問の首輪』だ。ウソをつけば首が絞まる。さあ、真実を語ってもらうぞ」
それはヒデオが異世界で手に入れたアイテムだった。
その名の通り、尋問を効率的に行うもので、異世界の中では人道的であるとして、多くの警察組織で採用されていた。
「魔法? ざけんな!」
蝦高は首輪を外そうとするが、首輪はびくともしない。
「そう興奮するな」
ヒデオは大型のナイフを取り出して、蝦高の顔に向けた。
「ちっ……」
脅すにはどこの世界でも刃物が一番だ。戯れではないことが分かると、蝦高は生唾を飲み込み静かになる。
「……お前、何者だ?」
「そうだな。『異世界からの復讐者』とでも名乗っておこう」
「異世界? ……なんだそりゃ?」
「さあ、質問に答えてもらうぞ。殺しはお前がやったんだな」
「……てめえ、殺し屋か?」
刑務所は一般人が立ち入ることのできない安全地帯だ。そこにわざわざやってくるのは、特別な事情を持った者になる。
おそらく自分の持っている情報が漏れるとまずい組織から派遣された殺し屋だろうと、蝦高は推測した。
「そんなことはどうだっていい。答えろ、お前が荒居一家を殺したんだな?」
「へっ、知らねえな」
「お前の名は蝦高太一。2021年12月20日、荒居家に忍び込み、一家全員を殺した。何者かによって殺害されたあと、物取りのため侵入したと主張しているがウソだ。お前は誰かに荒居氏を殺害するよう依頼を受けたんだ」
「はあ? 何言ってやがる。意味分からねえな。うぐおっ……!」
首輪が閉まり、蝦高の頸部が圧迫される。
「悪いな。それはあまり精度がよくないんだ。適当なことを言ってるとへし折れるぞ」
ただの尋問用のアイテムだ。相手の反応に合わせて締め付けるだけで、恐怖をあおるのが目的なのである。神が作ったアイテムでなければ、真実など分かろうはずがない。
「ひ、ひい……」
蝦高は細い息を吐いた。
「三つの選択肢をやる。素直に答えるか。それとも首輪で窒息死するか、ナイフで刺されて失血死するかだ」
「わ、分かった! 答える、答えるよ」
相手は完全に術中にはまった。
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