調査

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調査

「爆発の原因は不明? どういうことだよ!」  刑事である佐野重之は、報告に来た部下の松本を怒鳴りつけていた。 「独房に激しく燃える可燃物はありませんでした。ガス管も通ってません」 「じゃあ、何が爆発したってんだよ。部屋がまるごと吹き飛んで、穴が開いてんだぞ!」 「知りませんよ……。爆弾でも持ってきたんじゃないですか?」  理不尽な状況に松本は困り切ってしまう。  目の前には、独房であった場所が大穴になっている。鉄格子があったはずだが、今はまるごと消失している。天井もなくなり、綺麗な夜空が見えていた。 「爆弾がそう簡単に持ち込めるもんか! ここは刑務所だぞ! なんだお前、アメリカ軍が爆撃してきたとか言うのか!?」  佐野はつばを飛ばして悪態をつく。  松本はさらなるとばっちりを受けないかと、距離を取ってビクビクしている。 「監視カメラには何も映っていませんでした。直近の記録も調べていますが、怪しいものは……」 「……ちっ。『異世界からの復讐者』だと……。ふざけやがって……」  佐野は独房に残されたボイスレコーダーをすでに聞いていた。実物は鑑識に回してあるが、自分のスマホにもその録音を残してある。  爆発物は刑務所に存在しないが、何かが爆発した。忍び込んだ形跡はないが、囚人と話した人物がいる。明らかに情報と現実が矛盾していた。  警察にとってこれは、挑戦としか思えなかった。囚人の蝦高を暗殺するのが目的ならば、わざわざ証拠を残す必要がないからだ。  佐野は再びその録音の聞く。 「若い男か……」  声に加工した形跡はない。声の印象は若い男性だ。今、若い男といって思い当たるのは……。 「やはり、福永スカイタワーの事件と関連あるんでしょうか……?」 「そりゃあんだろうよ。訳分からねえ、爆弾魔が何人もいてたまるか!」 「はあ……」  強引な理屈だが、そうあってほしいと松本も思った。不可解な爆発事件を引き起こせる人物がたくさんいるとは考えたくない。 「被害者を全員調べろ。何か出てくるはずだ!」 「全員ってタワーのですか? 一万人もいますよ?」 「しらねえよ。奴は復讐者と名乗ってんだから、誰かに恨みがあるんだろ」 「まあ、そうかもしれませんが……」  福永スカイタワーの被害者は一万人近い。家族など間接的に関わっている人物を含めるととんでもない数になる。  しかし犯人が恨みを持つ人物がその中にいるとしたら、調べるのは無駄にならないはずだ。 「でもほら、今回の事件を考えると、荒居氏がらみじゃないですかね?」 「何言ってんだ? 両方調べるに決まってんだろうが!!」 「は、はいっ!」  松本はこれ以上佐野を不機嫌にしないように、一目散に現場の規制線を飛び越ていった。
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