にゃんにゃん

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にゃんにゃん

 あたしの彼氏は所謂ヒモである。役者志望の夢見るドリーマーで、日々どこかの舞台や劇団のオーディションを受ける毎日だ。時折、オーディションに合格するものの、収入は雀の涙程度で食べられる程ではない。そのような訳で、あたしが養っているのである。 彼氏があたしの家に来たのも、実家からの仕送りを打ち切られ大家に住んでいたアパートを追い出されて転がり込んできたからである。 いきなり彼氏が「アパート追い出された! 何日か泊めてくれ!」と、背中に大荷物を背負って襲来してきた時の気持ちは誰にもわからないだろう。 尚、泊める日数は決めていない。彼氏はいつ出ていくかを決めてないためにずっと居座っているのだ。 小狡い。 彼氏は整った顔立ちをしたモデルを思わせる顔をしている上に母性本能の琴線を掻き鳴らしてくる無力なダメンズなせいか、あたしはこれを許しているのであった。  あたしは2LDKのアパート一人暮らしのOLだ。給料もそれなりに貰っており、男の一人や二人養うのも容易である。だが、あたしが稼いだお金を働きもしない男に搾取されるのは癪に障る。あたしは彼氏に夢を見るのをやめさせようと考えた。正直なところ、地に足をつけて貰って結婚すらも視野にいれている。 「ねぇ? もういい加減に役者やめて働いたら? まだ若いんだからバイトしながらでも正社員の道を探しなよ?」 彼氏はソファーの上でごろ寝しながら大欠伸をした後、ぷいと体ごとあたしから外方(そっぽ)を向いた。 「おれ、社会不適合者だから無理なんだよね。コンビニバイトは接客でキレて2時間でクビになったし、居酒屋も客のクレームに口答えしたらクビになったしな、ハンバーガー屋のバイトも合わないから2分で自分からやめてきたし、工場も流れ作業に耐えられなくて2日でバックレた」 そう、あたしの彼氏は仕事が長続きしないのである。本人の中では「役者一本」で生きていくと心に一本槍があるらしく、それ以外にやる気が出ない厄介な精神構造がその原因だろう。
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