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お礼
その日の晩、夕食を終えて、夫に彼方のスーツの話をしていた。
「母さん、これ」
お風呂から上がった彼方が、白い封筒を渡してくる。
「なぁに?」
何も書いていない封筒に、尋ねても何も答えない彼方を見てから開けてみると、中からは電車の切符と温泉の招待券が出てきた。驚いて彼方の方を見ると、ふわりと笑っている。
「今日のお礼。たくさん歩いて疲れたよね? ゆっくりしてきてよ」
「彼方……」
驚いたのと嬉しいのとで何も言えなかった。本当に、何て優しい子に育ったのだろう。わたしは何度もお礼を言って封筒を受け取った。
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