ズッキーニスキニー

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「じゃあ」 そう言って柿谷は道の先に待つ友達の元へ去っていった。 二年間の片思いが報われずに終わった日。 桜の花弁も散ること無く。 ただ、乾いた春の風がグランドの砂ごと江奈の髪をもみくちゃにした。 昨晩今朝と気合いをいれて手入れをした髪は砂を噛んでボサボサ。 顔を涙でぐちゃぐちゃにしながら友人に慰められ、江奈は帰途についた。 部屋に駆け上がり畳の上にうつ伏せに倒れこんだ。 柿谷とは高1で同じクラスになってから、なんとなく気があって良く話すようになった。 自分の気持ちに気付いたのは二年になってクラスが離れてから。 いつも一緒にいた柿谷の存在が江奈の中で大きくなっていたことがわかり、それからどんどん気持ちは膨らんでいった。 3年になって再び同じクラスになってからは更に共に過ごす時間も増えた。 一緒に受験勉強も頑張った。 在学中に気まずくなって一番親しい女友達というポジションを無くしてしまうのは嫌だったし、受験が終わったら告白しようとずっと想いを秘めていたのだが… 前日の夜、勇気を出して送った告白のメッセージ。 返事を聞こうと声を掛けた柿谷が江奈に返した言葉は… 「栗田、昨日のアレ何だよ。ホント卒業式直前にあーゆーの止めてくれよ。…まあ、また連絡するわ、じゃあ、」 止めてくれよ、は無いだろ。 人の真剣な告白を冗談ととるなんて… いや、拒絶なのか。 友達なら良いけどそんな目では見れないってことか。 江奈が友達ポジションに甘んじて何のアピールもしてこなかったのが悪いのか。 どちらにせよ平気な顔して友達に戻るなんて今は無理、辛すぎる。 江奈は思い切ってトーク履歴を全部削除し、更に柿谷をリストから削除した。 その後、電源を切ってスマホを遠ざけた。 江奈は明日には都会へ発つ。 柿谷も上京するが、ずっと後になるそうだし学校も別々だ。 お互い新しい住所は知らない。 連絡を取る手段がなければもう話すこともない。 既に顔を見るのも辛い江奈には都合がよかった。
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