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家族、
「人見知り同士のご挨拶は終わったか?」
ダリからにこ、と笑いかけられてちょっと恥ずかしい。
人見知りなこと、バレてた…。
「さぁ、では、今日は四人家族としての初めての夕食よ、張り切らなくちゃ。みんな、野菜の収穫を手伝ってくれるかしら?」
シエルがぱん、と手を叩きみんなを見回す。
…え、『四人家族』……?
言葉に違和感を感じる。
だって、俺は急にこの世界に来た所謂不審者な訳で、ダリたちもたまたまその場に居合わせたから一旦保護してくれた。
でも、ずっとお世話になるつもりなんてない。正直さっきまで明日からの生活のことは考えてなかったけれど、今思いつくだけでもいくつかの生き方がある。
泊まり込みの職場を探して、働いてとりあえずお金稼ぐとか…お金、大事だし。
ひとり固まった俺をつつく感触。
目線で辿ると、俺の横原を人差し指でちょんちょんしているジェシカちゃん。
「イオリ兄様、どうしましたか?口が少し開いてます」
はずっっ!!!
「あ、ああ、ごめんね、ジェシカちゃん?」
はっず……と心の中で悶える。
あほ面…………はずい……。
ぽん、と頭に手のひら。
見上げると、
「保護した時点で、イオリは立派な俺たちの『家族』だ。今はまだ引け目や申し訳なさを感じたりするかもしれんが、じきに消し去れ。だって、『家族』だからな。申し訳なさを感じる代わりに感謝し合い支え合うんだよ。働いてもいいが、絶対に『うち』に帰って来い!」
ばしんっと俺の背中を叩き、ニカッと笑うダリ。
……この人は、心が読めるのだろうか。いや、俺の顔が分かりやすかっただけなのか?
なんだか恥ずかしいやらむず痒いやらだが…ダリの言う通り、この感謝は、この家に居てお手伝いを沢山することで返すことにしよう。
そう、心に決めた、とき。
「ええっ!?」
可愛らしい悲鳴が響く。
「かぞく、ってことは、イオリ兄様は、私の本当のお兄様になるんですか…!?」
「そうだぞー。憧れの『兄ちゃん』が出来たな、ジェシカ」
ダリに頭を撫でてもらうジェシカは溢れんばかりの笑顔をこちらに向けた。
「じぇしか、ずっとお兄ちゃん欲しかったの!優しいお兄ちゃん!イオリお兄ちゃん、じぇしかの家に来てくれてありがとう!」
そういうなり、俺の腹部へ突進…ハグをする。
俺は戸惑いながらも、ジェシカちゃんの頭をおそるおそる撫でる。
……『来てくれてありがとう』なんて。
一番もらえるとは思ってなかった言葉だ。
お姫様意識の口調も崩し、今は年相応の女の子としてはしゃぐジェシカちゃん、かわいい。
「……俺も、来てくれてありがとうって言ってくれて、ありがとう。俺もこんな可愛い妹ができて嬉しいよ」
子供には、自分の思ったことを素直に伝える。
元の世界で小さな子供のお世話をした時に、スタッフさんに言われた事。
子供には大人のように汚い裏表はないから、自分の感情をストレートに伝えるのが一番いい。
……だから俺は、人見知りだけど、小さな子とはまだ話せるんだ。
「さあさ、一段落したところで。早く収穫しないとご飯も遅くなりますよ〜」
シエルがすたすたとキッチンの奥にある扉を開けて出ていき、それを追うように、ダリ。
ジェシカちゃんが出た後に俺が出て扉を閉めた。
振り返ると、広くは無いが小さくもない畑。
そこに、なにやら沢山埋まっていた。
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