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村の人たち
二人の後を着いて行き十分ほど経つと、ようやく整備された山道になってきた。
それに、木々の隙間からは小さな村が見える。
この村で、二人は過ごしているのだろうか。
麓にたどり着くと、村が目の前に現れる。
上から見た通りあまり大きくはなさそうだが、あちらこちらから元気な声が聞こえてきて、活気のある村なんだろうと思う。
こういう光景、アニメでしか見た事ないな。
「この村の東に俺たちは住んでるんだ。着いてこい」
「はい」
「おやダリ、その子はどこの子なんだい?」
「見た事ない髪色ね、不思議」
「山から拾ってきたのか?」
どうやらダリは村の人気者らしい。
歩いているだけで次から次へと話しかけられ、何だか忙しそうだ。
まあ確かに、ダリが村のどの立ち位置かとかは知らんが、普通に背が高いしガタイいいから目立つのもあると思うけど…。
そして当然、そんな目立つ男にちまちま着いていく俺はさらに周囲の目を引く訳で。
そしてやっぱそんなに珍しいんだな、黒髪…。
「山で拾ったってか、見つけたってか、こいつが飛ばされてきた感じなんだけどな」
ガッハッハ、と笑うダリさん。
やめてやめて、みんな意味わかんなそうな顔してるよ…!
「見た目は珍しいかもしれないが、中身は俺たちと全く一緒の人間だ。悪い子でもないから安心して欲しい」
誇らしげに胸板をドンと叩くのはやめて欲しい。なんか照れるから…。
「まぁ、ダリとシエルさんが連れてくる子が悪い子な訳ないしな!仲良くしてくれよ、黒髪くん!!」
ダリさんに話しかけてきた人達の中のひとりのおじさんが俺の背を叩く。
それを皮切りに、皆が俺の体の至る所を叩いたり触りだした。
「ダリ程ではないが、弱っちそうな感じはないな」
「やん、意外と好青年じゃない」
「うちの娘と仲良くしてね♡」
「力仕事頼まれて欲しいな」
「困った事あったら何でも言えよ!」
…まぁ内容は様々だが、歓迎してくれてるって雰囲気は感じ取って、少しほっとする。
人の温かみに感謝だ。
だんだんと絡む人数は減ってきて、家の数もまばらになってきた。
意外と村の端っこだな。
逞しい後ろ姿のダリにてくてくと着いてきていたシエルさんがふと後ろに振り返って俺を見つめた。
「言い忘れてたけど、うちには娘がいるの。仲良くして頂戴ね」
「娘さん…ですか?」
「ちょっと人見知りなところはあるけど、優しくてとってもいい子よ。仲良くしてくれるといいんだけど」
「いくつなんですか?」
「今年で5歳、園に通ってるわ」
5歳の女の子か。
俺は子供は嫌いではないし、一時期は実家のバイトで近所の幼稚園のガーデニングをしていたから子供との関わりは割とある方だ。
水やりの時にホース奪い取ってくるのはちょっと困ったけど、楽しかった。
「仲良くなれるように頑張ります」
少しの間とはいえ一緒に生活させてもらうんだ、出来れば仲良くなりたいな。
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