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「青い屋根の家が見えるだろ?あそこが俺たちの家だ」 ダリの指さす先を見ると、確かに青い屋根の家がある。 すぐ側には畑があり、家を挟んで反対側には羊や馬が柵に囲われていた。 畑にはちょろちょろと緑が見えるので、何か育てているのだろう。 ていうか、馬とか羊とか、こんなに近い距離で接したことないかもしれない。小さな頃に訪れた動物園でももっと遠かった気がする。 さっきの市場辺りとは違い、ここはそんなに人もいないし家も少ない。 何より先程より山が近い。 割と村の端の方なのかもしれないな。祖父母の家もこんな土地だったな。 「自給自足…ですか?」 俺が元いた世界、特に俺がいた地域は都会で、自給自足とは縁遠い生活をしていた。 その分祖父母の家へ行くとテンションが上がっていたのだが、今まさに同じように気分が高まっている。 「完全なる自給自足ではないけど、出来る限り自分たちで育てられるものは育ててるんだ。あと、敬語は禁止だぞ」 「は…あ、うん、わかった」 言ったそばから敬語を使いそうになり慌てて言い直すと、ダリはグッと親指を立てた。 「ここが玄関だ、上がってくれ」 玄関には三足のサンダルがあった。サイズ的に、ダリとシエルと娘さんのものだろうか。 玄関にはシューズロッカーはなかったが、なかなか広く、ダリたちの普段靴三足に俺の靴を入れてもそんなに窮屈にならなそうだった。 リビングへ続く廊下には数枚ほど、額縁に飾られた絵があった。 クレヨンで描かれたのであろうその絵は、拙いながらも人であったり食べ物であったり、花であったりすることは見て取れる。 娘さんが描いた絵なのだろうか。 ひとつひとつ丁寧に額縁に入れて廊下に飾る所からも、ダリ夫婦のあたたかさを感じられた。 「それは娘のジェシカが描いてくれた絵たちだよ。上手だろう?うちの世界一の画家なんだ」 前を歩くダリが後ろを振り向いてウインクした。 ちょっと親バカ気味なのだろうか。 リビングにある家具はほとんど木製だった。 なんか、ほんとにアニメで見たままの景色だな…。 西洋風というよりかは東洋風に近い気がする。でもまあ異世界だし、そういう概念そのものはないのだろうけど。 「そこ座ってくれ、何か飲み物を出すよ」 「そういえば最近作った果実ジュースがあるはずよ、それを飲むといいわ」 シエルさんが飲み物をコップに注いだ後、俺に 「私ジェシカのお迎えに行ってくるわね」 と伝えてからまた家を出ていった。
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