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「大丈夫ですか? 言葉、分かりますか?」
(……は?)
大翔には、目の前の谷間が喋ったような気がした。その声は高く澄んだ、美しい少女のもののように感じる。そこまで思考した大翔の意識がゆっくりと覚醒していき、
「乳――っ!」
思わず叫んだ大翔は、身体をガバッと勢いよく起こす。
大翔の心臓は突然現れた谷間にバクバクと早鐘を打っていた。
(なんだ、なんだ? 俺は確か、さっきまで喧嘩していて……)
そう、ヤンキーに絡まれた大翔はいつものように喧嘩をしており、
(それから、後ろから一発殴られて……)
その拍子に気絶してしまったのだ。
(と、言うことは、ここは、病院か何かか?)
その割には先程、かなり騒がしかったような気がする。
「あの、もし?」
「は?」
ぐるぐると回る思考の中、大翔は再び谷間から美しい声で話しかけられた。いや、正確には谷間の持ち主から声をかけられたのだが、今の大翔にはそこまで考えを及ばせる余裕がない。
「どこか、具合が悪かったりなさいますか?」
なおも谷間から声をかけられた大翔は、そこでようやく視線を上に持って行き、眼前に現れた声の主の顔を見る。そしてその様相に言葉を失った。
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