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そして定時過ぎ。
「津田島さん、どうかな、考えてくれた?」
「……はい」
常務に呼ばれて、転勤の打診についての返事を聞かれた。
「ごめんね。もうちょっと考える時間が必要だとは思ったんだけど、人事部が一日中うるさくて」
「いえ。私のわがままで時間をくださったのですから、むしろすみませんでした」
「いいんだ。……それで、どう?」
「……私───」
ゴクリ。生唾を飲み込んで。
「……私も、福岡までご一緒させていただいてよろしいでしょうか」
胸の痛みを隠すように、笑って返事をした。
土日、ずっと考えていた。
行くべきか、行かないべきか。
同期や先輩にも相談してみたら、皆"キャリアを積みたいのなら、寂しいけど絶対に行くべき"だと頷いてくれる。
新支社の立ち上げなんて、そうそう関わることができるものでもない。
本当に忙しいだろう。けれどその分学べること、成長できることに関してはここにいる比ではないとも思った。
常務は数年と言っていたけれど、それが明確に何年かは決まっていない。すぐに本社に戻って来れるとも限らない。
支社が軌道に乗るまで、が本来の任期だろう。
それに私は常務付きの秘書だから、軌道に乗った後も常務が残ると言えば残ることになる。帰ってこられる保証など無い。
それでももう、行くと決めた。挑戦すると、決めた。
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