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「本当か!ありがとう。津田島さんが着いてきてくれるなら一安心だ。本当に助かるよ」
「いえ、私もお誘いいただいて嬉しかったです。まだまだ未熟ですが、常務のお役に立てるように精一杯頑張ります」
常務の嬉しそうな笑顔に同じ笑顔を返した私は、一礼してから秘書室に戻った。
傍にあるサボテンは、今朝真っ白な大輪の花を咲かせた。
「……私のことを、応援してくれてるの?それとも、慰めてくれてる?」
無意識に、その花に語りかける。
寂しく無いと言えば、嘘になる。
でも、ほんの少しだけ、ホッとしている自分もいるのだ。
転勤すれば、隼也とは滅多に会うことが無くなる。
もしかしたら、もう二度と会わないかもしれない。
会わなければ、もうあんな思いをしなくていいのではないかと思ったのも事実だった。
あの一夜を最後に、隼也への想いは綺麗さっぱり忘れよう。
そのためには、今回の転勤話は朗報とも言えた。物理的に距離を取ることも必要だ。
タイムカードを切って退社した頃には、空には綺麗な満月が輝いていた。
朝、仕事だからと電話を勝手に切ったことを思い出して、スマートフォンを取り出して耳に当てる。
コール音はほとんど鳴らないタイミングで相手は電話に出た。
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