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「どうしてこうなった!?」
思わず自問自答せざるを得なかった。今自分の身に起こった出来事が、悪い意味で現実離れしていたからだ。
俺は今、手足を拘束され椅子に縛り付けられている。頭には袋が被せられ、外の状況はよくわからない。
いかんせん視界を塞がれたせいで、捕らえられてからどれほど時間が経過したかも定かではない。
いくら足掻いたところで外れる気配はなく、むしろ椅子が倒れて危険だと悟り、渋々諦める。
その代わり、なぜこのような目に遭うに至ったかを、俺は記憶の糸をたよりに原因を探ることにした。
…あれは確か、今朝の最後の登校の時だった。下駄箱を開けることさえ微妙に染み染みとしていると、そこには上履きとは別に、一通の封筒が入っていた。
ラブレターと呼ぶには簡素だったが、中に入っていたのは、これまた妙に綺麗な字で、ただ一文だけが綴られていた。
『屋上でお待ちしています』
卒業式が終わり、卒業生と在校生が最後の親交を温める中を、柄にもなくそわそわした心持ちで目的地へ突っ切っていく。
無粋だっただろうが、職員室で鍵を貸した形跡を確認して、それが早朝から借りられていたことを知ると、どうしても期待してしまう。
まさか第2ボタンをあげる相手が自分にいたとは、夢にも思わなかった。そういうささやかなロマンス、高校時代の最後に訪れるとはなかなか悪くない。
「…お、おまたせ、しました」
我ながらヒドい上擦り声をしながら、鍵の開いた屋上の入り口を開く。さあ、待っているのはどんな人物なのだろうか。
…そんな浮かれポンチな期待に満ちた俺の視界は、急に闇に閉ざされた。背後から何者かが忍び寄って、布袋を頭にかぶせてきたのだと、今なら理解できる。
視界を奪われ、慣れた手付きで手足を拘束され、あれよあれよという内にどこかの一室へ誘拐されてしまったのだ。
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