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──俺は童貞である。
それを恥だと感じたことはないし、周囲から蔑みの視線を受けたこともない。いや、そもそも公言するようなことでもないが。
クリスマスだのバレンタインデーだのと、宗教行事にかこつけて男女がイチャコラする時期になったとしても、それは変わらなかった。
まったく羨ましくないといえば嘘になるが、かといって躍起になる程餓えているわけでもなく、交際経験ゼロのまま季節は流れていく。
とまあ、別段大切ではないが捨てる機会もなくこの純潔を持て余したまま、ある意味では平穏な灰色の日々を過ごしていていた。
そうして気がつけば、俺は壇上で頭頂部が寂しそうな校長から卒業証書を授与され、高校生活にピリオドを打つのだった。
──そう。そのはず、だったのだが。
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