3人が本棚に入れています
本棚に追加
3
しばらくして、ドアがノックされた。
エマは答えられなかったし、答えるつもりもなかった。
ひざの上でヒューが頭をもたげ、ドアのほうを見た。ギャー、とかわいらしくない鳴き声をあげる。足元にうずくまっていたミィもジェイも、同様のしぐさを見せた。それぞれに、ガー、とか、ギィ、といった奇妙な鳴き声をあげる。部屋のすみにいた、ダニエルの車でやってきた猫が、のそりと立ちあがった。
またノックの音。
エマが答えないでいると、来客は外廊下を歩いて、窓のほうへ移動した。窓からなかをのぞきこむ。逆光のなかに姿が浮かびあがる。ひとりではなかった。ふたりの男だった。三十前後の黒い髪の男と、二十歳前後のスキンヘッドの男。ふたりともラフなシャツ姿で、ネクタイを締めていない。荒くれ者には見えなかったが、油断はできない。
こんなときにライフルをぶっ放せたら、とエマは思う。
彼女の腰かけたチェアから数メートルはなれた壁には、ダニエルを脅すのに使ったライフル銃がかけてある。となりのキッチンの引き出しには、三十八口径の拳銃も入っている。
だが、いまのエマには、どちらも用をなさない武器なのだった。
そのとき、窓からこちらを見ていた年上の男が、エマに気づいた様子だった。
窓ガラスをノックして、「おーい」と呼んでいる。
エマは答えない。
男たちは顔を見合わせ、あわてたように、またドアのほうへともどる。
最初のコメントを投稿しよう!