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「ご飯にしなくちゃね」
ご主人様はそう言って立ち上がり、台所へ歩いていった。
思うように伝わらない事に疲れた私はこたつの前で丸くなり、キャットフード皿を遠い目で見つめる。
ご主人さまの足音に合わせて皿の前に移動しようとした時、再び私の身体は抱えられた。
目の前にチュールがスッと差し出される。
それは、贅沢本マグロチュールだった。
今日はこれを食べる日じゃない。
どうしてだろうと思ってご主人さまを見上げると、涙の雫が私の髭に落ちてきた。
「今までありがとうね……」
震えるご主人さまのその声を聞いた時、私は全てを悟った。
私が明日死ぬと知っていること。
どこにも行かず、そばにいて欲しいということ。
私はさいごのチュールを食べながら、しっぽの先が動かなくなるまでこの膝の上にいることを決めた。
Fin
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