さいごのチュール

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 よろりと立ち上がり、縄跳びを咥えてご主人さまの手元にポトリと落とす。  ご主人様は縄跳びを手に取りしばらく眺めた後、こたつの上に置いた。  そして、私の頭を優しく撫でる。  違う。  そんなことを要求しているんじゃない。私は外に行きたいんだ。  ご主人さまの手を振り払い、軽く指を噛んでみる。昔はよくこの行為をして外に放り出された。きっと今日も外へ放り出してくれるはずだ。  そう思ったのもつかの間、ご主人様は私を抱えて膝の上に置き、再び頭を撫でる。  何故か、その手はぎこちなく、まるで壊れそうなものに触れるようだった。
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