邂逅

1/1
前へ
/3ページ
次へ

邂逅

徹夜明けの今日は卒業式だ。 ちっとも嬉しくない。 周りでは涙を流している生徒もいるが、私はちっとも泣けなかった。 そのまま卒業式は終わった。 その後、私たちのクラスは集まった。 どうやらタイムカプセルを埋めるらしい。 くだらない。私は適当に制服のリボンをとって、入れた。 埋めるのは男子たちがやってくれた。 本当なら彼もいたのだろう。 悲しい。辛い。もう帰ろう。 そう思った。 その時、桜の花弁(はなびら)が私の肩に乗った。 その花弁を、見ていたら、悲しくなってきた。 「ごめん、もう帰るね」 「すいません秋桜さん。卒業アルバムだけ渡しておきますね」 担任だった猪名(いな)先生が卒アルを渡してくれる。私は受け取った。 その時風でページが開いた。そこには油性ペンで、こう書いてあった。 『秋桜。ごめんな?俺、秋桜を困らせたよな。俺、病気だからって勝手な理由で告白して、秋桜は優しいよな。ごめんな。自分勝手な俺で。ほんとにごめんな』 「ばか、、、っ、、、本心だし、、、、」 風が、やさしく私の頬を撫でる。 彼のように。 私は、空を見上げる。 そこでは桜の花びらが舞っていた。 私は思った。 『春がきたら、笑って桜を見上げよう』と。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加