童貞のまま異世界転生

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童貞のまま異世界転生

 童貞歴30年の俺は、彼女も出来ず恋も無いまま人生が終了した。  筈だったが、何故か草原のど真ん中に立っていた。  見知らぬ風景、服が何故だか布で皮鎧を着ている。  そして、目の前に半透明なウィンドウに『ようこそ異世界へ』と日本語じゃ無いのに、そう読める文字が表示されていた。  闇雲に歩いてみたら街道が見つかったので、道沿いに歩いて小一時間、街が見えた。  街の中は野郎達でごった返していた。女性が一人も見かけられない。そして、漂う童貞臭。まさか皆俺と同じ異世界転生?  話しかける勇気はなかったので、街の中で一番高い建物に向かった。人の流れが其処から流れている様に感じたからだ。  中に入ると、ハゲ親父が受付をしていた。列になっていたので並ぶ。そして、自分の番となった。 「ようこそ、冒険者ギルドへ。ダンジョンに入りたければ登録していないと駄目だぜ」 「ダンジョン以外の仕事は登録しなくても受けられるんですか?」 「ああ、雑用が殆んどだから登録は要らない」 「じゃあ、登録しないで仕事を紹介して下さい」 「良いのか? ダンジョンに入らないで」   「いきなり戦闘なんて無理ですから」 「まあ、本人が良いなら仕方ねえな。仕事はコイツがお勧めだ」  渡された紙には、薬草採集の依頼が書かれていた。勿論、知らない文字で。  依頼を受けて、街を出る。近くの森に行き、教えて貰った薬草が生えていそうな場所を探す。  数十分探し回って漸く薬草の群生地を見つける。  雑草を取り除くみたいにブチブチと引き抜く。  必要な部分が葉だけの様で、ある程度雑に扱っても問題ないのだとか。楽ではないが、気軽に出来て中々の仕事だ。  十分に採集したので街に戻る。動物はたまに見かけたが、魔物らしき姿は見当たらなかった。聞いていた通り、どうやらダンジョンにしか魔物は居ないみたいだ。  ダンジョンには魔物がわんさか居る変わりに、地上には魔物が居ないとハゲ親父が教えてくれた。  しかし、皆挙ってダンジョンへ行きたがっていたが、何故なんだろう?  俺みたいにインドア派な奴等も居た筈なんだが、ソイツ等もダンジョンへと足を運んでいた。  冒険者ギルドで依頼を完了させて、報奨を貰う。一泊する分位の稼ぎにはなったみたいだ。宿屋も紹介して貰った。  別の仕事をする気にはならなかったので、日はまだ高いが宿屋に向かう。  宿屋の主人も当然のごとくオッサン。銀貨を支払い、部屋の鍵を受け取る。食事を先に済ませるため、食堂に入る。  定食げ安かったので注文して食べた。中々の美味しさだった。    部屋に行き、鎧を脱いでベッドにダイブする。少し固めだったが、疲れが貯まっていたのかそのまま眠りについた。  異世界転生一日目はこうして過ぎていった。戦闘するのは当分先だな。命あっての物種だし。
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