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この街に女性が居ない訳
翌朝、朝食を頂いてから再び冒険者ギルドへ。
薬草採集の仕事を又受けて森へ。
採集に成功して無事帰還。報奨を貰い宿屋へ行こうとして、ふと立ち止まる。
可笑しい、いくらなんでも女性に会わなすぎる。
街の中を行き交うのは野郎だけ。出店で店番しているのはオッサンだけ。子供も見当たらない。
不思議に思い、何とはなしに出店の品を買ってからオッサンに話しかけた。
「なあ、女性を見かけないんだが何故なんだ?」
「ああ、この街に女性は一人も居ないよ。何せダンジョン目的の輩しか入り浸らないからな」
「それと女性が居ない事にどんな関係が?」
「お前さん、冒険者じゃないのかい? この街に来たんなら、目的はダンジョンしかないと思うんだがなぁ」
「未登録だ。ダンジョンに何があるんだ?」
「知らないでこの街に来るなんて珍しいな。魔物がダンジョンにしか居ないのは知っているかい?」
「ああ」
「じゃあ、その魔物が人形でしかも女性の姿なのを知らないのか」
「なん、だと?」
「通称童貞卒業ダンジョンって呼ばれている、襲われて卒業するか、自分から襲いかかって卒業するかの二択しかないくらい、卑猥なダンジョンで有名なんだが」
「俺は今から登録しに行く」
「因みに、倒してドロップするのは全部精力剤で、倒されて失うのは童貞だけだ。童貞じゃない奴は襲われないらしい」
俺は話し半分で冒険者ギルドに直行した。
「登録します」
「なんだ、やっぱりするんじゃないか。ほれ、書類に記入しな」
ハゲ親父に紙を渡され記入する。日本語で書こうとしても何故か知らない文字になるが、内容は読める。
「ダンジョンでの注意事項だ。襲われた場合、服がなくなる恐れがあるから着替えを持って入った方が良いぞ」
登録を済ませて、服屋とダンジョンの場所を聞いてからギルドを出る。
服は一番安い麻の服を買い、ダンジョンへ。
登録後に貰った登録証を門番に見せていざダンジョン。
ハゲ親父が言っていたが、此処の魔物は女性の匂いが嫌いらしく、女性冒険者が訪れた際に魔物が逃げてしまい、他の冒険者達から苦情を言われて二度と来なくなったとか。
他にも、既婚者の冒険者が訪れた際にも魔物が姿を眩ましたらしく、女っ気が無い街が出来上がったそうな。娼館も無いらしい。
女性が居ない訳を知り、野郎だらけの実情に納得した。
さあ、俺の相手はどんな魔物なんだろうか?
期待に胸を膨らませて、ダンジョンの中へと入って行った。
この時迄、街に同族(童貞)が沢山居た事に何の疑問も抱いていなかった。
まさか、童貞卒業に幾つかの試練が存在していたとは思いもしなかった。
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