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いつも、何かに飢えていた――
暑い・・・食べたい。
何でもいい、苦しい、頭が痛い。
足の裏が熱い、膝がガクガクで歩けない。
もう嫌だ、止まろう。
寝転がって休めば治るかもしれない。
「はぁ、はぁ、はぁ」
熱い・・・お腹を出したのにさっきよりも暑くなる。
見えるのはどこまでも黒い地面。
変だな・・・ぐにゃぐにゃした物が地面から出ているよ。
「はぁー、はぁー、はぁー」
ぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃ・・・
変だな・・・全部ぐにゃぐにゃ・・・
水なのか?カサカサで熱い口から舌をいくら伸ばしても冷には届かない。
何も無い、暑い・・・何も感じない。
歩か・・・ないと・・・
「君どうしたの!?大変!!すっごく熱くなってる!」
な・・・に?明るくて見えない・・・う、浮かび上がってるの?俺捕まった・・・?食べられるの・・・?
「熱中症ですね、もう少し遅かったら危なかったと思いますよ。大分痩せてますけど、体に異常は無いようです。お前ラッキーだったな!いい人に見つけて貰って、感謝するんだぞ?」
うわ!?何このオスの人間!何で急に俺の頭をぐちゃぐちゃにするの!?
すっごく嫌だ、普通初対面でそんな事する?
失礼にも程があるよ!
「よかったぁ、大事がなくて。先生ありがとうございました。さ、行こうか君」
暗くて狭い。ここはママといた所に似てて好き、安心する。ただ少し揺れるのが嫌い。
「君は野良なのにいい子だね。ママが人に餌でも貰ってたのかな?まだ子供だし返してあげたいけど、見つけるのは難しいかな・・・
ウチで飼ってあげたいんだけど、お父さんが猫アレルギーなんだよね・・・
でも大丈夫よ!私が責任もって飼い主を探してあげるからね。こう見えても顔広いのよ?最悪幼なじみもいるから、大舟に乗った気持ちでいてね!」
それからは人間の巣の中で生活をした。
これが案外快適で驚いた、ママは人間が危険だと言っていたけど、まぁそこそこかな。
「小春、猫のトイレ掃除忘れてるわよ!」
小春のママは厳しい、そこは人間も猫と同じらしい。
「聞いた?周三、たまには掃除してくれてもいいと思わない?そうよね!周三は本当いい子ね」
小春だけは、いつもこっそり俺に周三という。それが何かは知らない。
長い間ここで過ごし、俺は成猫になっていた。
そろそろ子孫を残しても良い頃だ。
そう思っていたある日、小春はいつもと違って目から水を出して俺を強く抱き締めた。
何回も周三と言ったがやっぱり何かは分からなかった。
次に日が昇った時、俺は知らない人間の巣に移された。
そこの人間達も、小春達と同じような事を繰り返して生きている。
何が楽しいのかは知らないが、そいつらは俺に周三とは言わない。
快適ではあるが、そろそろ巣の中でなく外で生きなくてはならないと、外を見る度俺の何かが言っていた。
そして、人間が巣から出た瞬間を狙って、俺は人間ではなく猫に、本来の自分に戻った。
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