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天高く馬肥ゆる秋。
快晴の秋晴れの下、私は人生最高潮に太っていた。
重い足を段に乗せ、よっこらしょと重い体を持ち上げる。
太い足、太い太もも、丸く大きなお尻。
乳房よりも突き出たお腹。
太い二の腕、太い指、太い首。
もはや何重になっているのか分からない顎。
パンパンに張った頬っぺた、切れ長にしか開かない目。
裸同然の恰好に、興奮した男たちの熱い視線が注がれる。
いや、女も混ざっている。
子供も老人もいる。
老若男女と言っていい。
彼等は観客だ。
その視線はレオタードの胸のところがはち切れんばかりに膨らんだ私の大きなバストに刺さっている。
いや、ちゃんと言おう。正確に言おう。
彼等は私の胸を気にして見ているのではなく、私の体全体を、何か奇妙なものでも見るかのように眺め回している。
目の前には、女。
こいつも太っている。私以上に太っている。
背も私より大きい。
私と同じように、その体は全てが太いパーツで成り立っている。
腹も乳房も尻も、私よりでかい。
女はほとんど裸だ。
私もほとんど裸だ。
衆人環視の中、二人の年若い女が白いレオタード姿で向き合っている。
いや、レオタードの他にも私が身に付けているものがあった。それは、腰に巻かれた茄子紺の締め込み。
相手は萌黄色の締め込みだ。
これが似合うのは、ファッション雑誌の表紙を飾るような、細長い手足がすらっとして、ウエストのくびれた女ではない。
私のようなずんぐりむっくり。何もかもが太い女。
膝を曲げ、腰を落とす。
尻を観客の方へと目一杯突き出す。
甲高い声が響き渡る。
さあ、戦いを始めよう。
私のアドレナリンは、さっきから濁流のようにほとばしっている。
「八卦よい、残った!」
うら若き19歳の乙女である私が戦うのは土俵の上だ。
それは比喩的な意味で言っているのではなく、私は本物の土俵の上で戦っている。
一昨年の春、高校を卒業した私は、女子大相撲の門を叩いた。
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