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大真面目な顔で子猫に語りかけると、すぐにベッドへ戻ってくる。今度はあまり暴れられなかったようだが、夫と子猫の喧嘩はなおも継続中だ。眠そうにしながらも必死で智希になにかを訴える子猫だったが、智希は小さな喧嘩相手を放置することに決めたらしい。
力が抜けて動けない楓佳の股をティッシュで優しく拭き取ると、そのままショーツだけ穿かせて抱き寄せられる。どうせならパジャマもちゃんと穿かせてほしかったが、楓佳の身体を片手でゆるく抱いてほうっと息を吐く夫は子猫どころか楓佳の文句も受け付けるつもりはないようだ。
それでも楓佳は諦めない。
「智希……やっぱりにゃんこ君、ここで飼っちゃだめ?」
肩だけで後ろを振り返って問いかけてみる。反対の手で頬杖をついて顔を眺めていたらしい智希は、楓佳と目が合うと一瞬困ったような顔をした。けれど楓佳の必死さを感じ取ったのか、盛大なため息をつきながらもその提案を受け入れてくれる。
「……いいよ、もう。しょうがねぇから」
元々彼は動物嫌いではない。だから寒空の下で震える子猫を見捨てられずに家まで連れ帰って来たし、最初はちゃんと飼うつもりだったのだ。何か気に入らないことがあって飼う方針から責任を持って飼い主を探す方針へシフトしたらしいが、どうやらその考えを引き留めることができたようだ。間違いなく『いいよ』という言葉を聞いた楓佳は、嬉しさのあまりがばっと起き上がってしまう。
「わーい、ありがと! 智希、大好きにゃーんっ!」
「んぐ!?」
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