夫と子猫は喧嘩中

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 智希は本気だ。名前を呼ぶ声は極めて穏やかだが、深い口付けの合間にパジャマのボタンを一つずつ丁寧に外す様子は楓佳を焦らして仕置きをするようだ。さらにパジャマの中に手を滑り込ませて乳房を包み込む手のひらは、軽率な行動を責めるようでもある。  わざと楓佳の羞恥心を煽るようにゆっくりと胸を揉んで撫でられると、風呂上がりの彼の体温が移ったように楓佳の身体も強い熱を持つ。 「んっ、ん」 「声、我慢しろよ?」 「や……ぁん」  下着を身に着けていない胸の膨らみを優しく掴まれ、反応を始めている突起をきゅうっと優しく摘ままれる。そのもどかしい刺激に声が出そうになると智希が耳元で声を出さないようにと指示してきた。  確かにここで声を出せば、せっかく眠った子猫が起きてしまうかもしれない。だったら止めて、と言いたい気持ちもあるが、ふたりにとって大事な記念日なのに触れ合うこともないのかと問われれば申し訳なくも感じてしまう。 「楓佳、指」 「え……」 「舐めて。俺が直接舐めてもいいけど、楓佳濡れやすいだろ。音でアイツ起きそうだから、口で濡らして」  ベッドランプに照らされた智希の表情は、いつの間にか不機嫌なものから楽しそうなものに変わっていた。ショーツの上から恥丘を撫でながらわざわざ濡れやすいなんて言わなくてもいいと思うが、それよりも恥ずかしい要求の方に意識が向いてしまう。
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