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引き留めるような蜜壁の痙攣が治まると、中から陰茎がずるぅ……と引き抜かれた。楓佳の顔を見つめていた智希はフッと気が抜けたように笑って額に口付けてきたが、そのキスで急に我に返った。そして達成感と開放感と羞恥心と背徳感を練り混ぜた感情を吹き飛ばすように、後戯に身体を撫でる夫の顔を睨み付ける。
「ばか! 智希のばかっ! にゃんこ君に見られたじゃない!」
「バカとはなんだ。バカは楓佳だろ」
一瞬甘やかな空気が流れたものの、絆されている場合ではない。涙目のまま智希の胸をぽこぽこと叩くと、彼も再びむっとした表情になった。
「なんで俺にイカされてその直後に他の男を心配するんだよ。意味わかんねぇ」
「意味わからないのは智希の方でしょ! にゃんこ君はにゃんこだよ!?」
「ああ、もう……わかったって」
はぁ、とため息をつく智希をきつく睨むが、あまり効果はないようだ。楓佳の主張を無視して身体を起こした智希が、ベッドから出て子猫に近付いていく。
「もう夜も遅いんだから、あんまり鳴くな。明日また構ってやるから今日は寝ろ」
いつの間にかブランケットとタオルから這い出てミャーミャーと小さな鳴き声を零す子猫にも、智希はいつも通りのぶっきらぼうな態度だ。抱き上げた子猫を元の場所に戻し、その頭をわしわしと撫でる。
「夜に啼いていいのは楓佳だけだ。それに楓佳はこの時間、俺のモンだからな」
「ちょ……何言ってるの、ほんとに」
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