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「捨てるなら最初から飼うなよなぁ。この雪の中で『可愛がってあげてください』じゃねーよ。可哀想だろ」
智希の口振りとこの状況から察するに、どうやら彼は捨てられていた子猫を拾って家に連れ帰ってきたようだ。
コートの中に大事にしまった子猫を外に出して腕に抱く智希だったが、子猫は何かが気に食わないらしい。智希の手の中で手足をばたつかせて暴れると、隙をついて彼の手からぴょんと飛び降りてしまう。
楓佳はそれなりに高身長の智希の手から飛び降りれば、子猫が怪我でもしてしまうのではないかと焦った。だがそこはさすが猫である。空中で綺麗にくるんと身体を返した子猫は、そのままカーペットの上に見事に着地した。
つい感嘆の声を上げそうになるが、美しい身のこなしに感動している場合ではない。着地と同時にぴょんと飛び跳ねた子猫は、そのままリビングの中をぐるぐると走り始めた。
「って、ああっ! ラグが泥だらけにぃ……!」
「ああ、こいつすげぇ暴れるわ。なんか深めの段ボールに入れられてたし」
「それ先に言って!」
その段ボールから救出する際、子猫にかなり暴れられたらしい。今日はこの地域には珍しい降雪日だったが、降っては溶ける雪と土が混ざり合い、路面はどこも泥だらけである。その子猫を一度箱の外へ取り逃がし、そこから再捕獲したのだろう。よって智希も猫も泥だらけの状態だ。
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