夫と子猫は喧嘩中

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 トイレといえば、この子猫の性別はどっちなのだろう、とまたスマートフォンの画面をスクロールする。調べて出てきたネット記事や画像を見比べる限りこの子猫は男の子だと思われるが、小さいうちは素人には見分けがつきにくいらしい。確かに子猫のお尻の周辺を触るとなにかぷにぷにした感触はあるが、これがオスの特徴なのかどうかは判断が出来ない。  楓佳の触り方が悪かったのか、やんちゃな子猫はまた元気を取り戻したように楓佳の手にじゃれつき始める。ごろごろと喉を鳴らすのでわしゃわしゃと撫でていると、お風呂に入っていた智希がリビングに戻ってきた。 「……え、なんでそんな懐いてんの」  声に反応して振り返ると、首からタオルをかけたままこちらを見下ろす智希の姿があった。ただしその声はやけに不機嫌である。 「俺、すんごい威嚇されたのに。触らせてくれるまで十五分もかかったのに」 「え、この雪の中で十五分も頑張ったの……?」 「あのまま見捨てるわけにはいかねーだろ」  ぶっきらぼうにそっぽを向く夫に、心の中で『優しい……』と呟く。身長が高くて前髪が長く目つきが悪いので粗野な印象のある夫だが、内面は案外優しい性格だ。そんな彼は子猫を救出するために降雪の中で十五分も粘ったらしい。残念ながらその優しさはこの猫には通じていないようだけれど。 「ご飯できてるよ。にゃんこ君はお腹空いてるかなぁ」
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