夫と子猫は喧嘩中

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 智希はそれだけ口にすると、唐揚げの残りを味噌汁で流し込みダイニングから立ち上がってしまう。脱いだコートを廊下に設置されたコートフックにかけ、そのまま洗面所で歯磨きを始めてしまう。何をふてくされているのか、大好きなビールも飲まずにもう眠ってしまうようだ。 「智希は意地悪だね~?」  ラグマットの上でじゃれている子猫に語り掛けながら一旦外に出すと、テーブルとブックラックを退かしてラグをフローリングから剥ぎ取る。そのままくるくると丸めて洗面所に持っていくが、もう遅い時間なので洗濯をするのは明日だ。 「暖房切ったらリビングでも寒いかな。おいで、にゃんこ君」  つるつる滑るフローリングの上で固まっている子猫に話しかけると、小さな身体を抱き上げてリビングを出る。もしかしたらお腹が空いているかもしれないが、明日病院に連れていくまでは変に飲食物を与えることは出来ない。空腹は一晩だけ我慢してもらうことにして、あまり使っていない古いブランケットとタオルを用意してベッドルームへ入る。 「寝室に他の男入れんなよ」 「何言ってんの、もう」  ベッドの中でスマートフォンゲームをしていた智希が、また不機嫌な声を出す。その夫を一言で律すると、座椅子の上にブランケットとタオルを使って小さな簡易ベッドを作り、そこに子猫を収納する。にゃあ、と不安そうな声を出されたが、外から連れてきた子猫を病院に連れていく前にベッドにいれるわけにはいかない。とりあえず身体は拭いたが、今夜のところはここが彼の寝床だ。
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