1.東京タワーとキーホルダー

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1.東京タワーとキーホルダー

  水曜日の放課後、それは僕にとって一週間の始まりであり、終わりでもある。永遠にも思えた色映えのしない無色透明の日々の中で唯一その瞬間だけが色と熱を帯びて、空っぽの心を満たしていく。 ——僕だってそう、君だってそう ——本当は最初から分かっていたんだ ◇  僕は地元である新大久保駅のホームの端に立っていた。新大久保は新宿駅から一駅という立地で、駅の東側に広がるコリアンタウンが有名だ。ただ僕が住んでいるのは反対側にある大久保駅より更に向こうの住宅街だったし、通学にしかこの駅を使うことがなかったから、十四年この街に住んでいるけれど今眺めているこの景色は未だに得体の知れない場所だったりする。  そんな街並みを遮っていく電車をぼんやり見送っていると、ふと背中をつつかれた。振り返るとそこに君が立っていた。濃紺のプリーツスカートに白のニットカーディガンという服装は、きっと君にとってはありきたりの格好なんだろうけど僕にとってはとても眩しく見える。 「お待たせ。待った?」 「待っていないと言えば嘘になるけど、そこまでじゃないよ」 「それは待ったと言ってるのと同じことだよ」  彼女の顔が少し綻ぶ。平静を装っていたけれど、彼女と会う瞬間は今でも緊張するし、何かいけないことをしているような気持ちになる。
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