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テーブルの上で、スマートフォンが着信のメロディを奏でる。友人からだ。
黒猫イラストのアイコンから吹き出しが表示される。
〈おはぽよ。宿題ナウ。先に学校に行ってくれw〉
小学校の頃から周囲のクラスメートとは家庭環境が違うと感じていた。家族で旅行に行ったとか、クリスマス会をしたとか、栞にはキラキラした物語のように聞こえた。
同時に惨めな気持ちになった。その場所にいて話を共有してはいけない気持ちになった。
いつしか、自分の意思で教室の隅に一人でいるようになっていた。
高校生になってからである、そんな栞に話しかけてくれたのが、この日の朝に栞へメッセージをくれた橋本悠里だった。
いつもなら悠里が隣にいるのだけれど、この日は一人で登校した。学校に到着するとすぐに、クリスマスイブをどう過ごすかという話題が、あちらこちらから聞こえてくる。
「私には関係ない。淋しくなんかないもん」
疎外感を必死に押し殺し、耳を塞いで教室まで走り抜けた。
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