交差点

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 帰り道、創業四十年になる近所のケーキ屋、『佐藤カカオ』へ寄った。このお店の店長と母は昔から仲が良かった。 「しおちゃん、ちゃんとご飯食べてるかい? 良かったらこれ、持ってって」と、そう言って蓮根の金平を使い捨てのパックに詰めビニール袋に入れて渡してくれた。  栞は「ありがとう」と答え、お母さんが好きだったモンブランを二つ買い店を出た。  ケーキ屋の隣には数メートルに渡る竹林があり、道路から一メートルほど低い地面から生えている。竹林と道路の間には背の高い草が鬱蒼と生い茂り、草の先端は道路と同じ高さまであった。  学生鞄は腕に掛け、ケーキの箱を両手で抱えるように持って歩き始めた栞は、ケーキに合う飲み物を妄想し顔を綻ばせた。  交差点に差し掛かると、道路の向かい側までミライが迎えに来ていた。 「ミライ! ただいま!」栞は手を振った。  歩行者の信号機が青に変わり、横断歩道を渡る栞はロウソクを買い忘れたことに気付いた。「あちゃ、ロウソクは必須だよね」そう言って踵を返したその時だった。
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