交差点

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 猛スピードで信号無視をする黒いセダンが栞の背後に現れた! 悪魔の叫びにも聞こえるけたたましいブレーキ音が耳を(えぐ)る。その直後、ボンネットをへこませたであろうなまなましい音が竹林の中を駆け抜けた。  その車は何事も無かったように走り去る。交差点に栞の姿はなかった。静寂を取り戻した交差点で、憂色(ゆうしょく)を漂わす信号機が、ただただ通りゃんせを口ずさんでいた。  ミライは、道路下の草むらに向かって「ミャ~、ミャ~」と鳴いている。暫くそうしていたが、主人を見失ったことに気付き、鳴くのをやめ辺りを見回した。  すると歩道に転がる栞のスマホを見つけた。チャンスとばかりに、ピョンと駆け寄り前足で触り始めた。
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