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〜生徒会長side〜
それなりに整った顔。それなりに人受けする性格。俺には個性というものがあまりない。
強いて言うなら、俺は世間一般的に言う俺様らしい。
まぁ、それもそこら辺のやつが適当に言ってるだけだと思ってるが。
そんなことをぶつぶつと考えながらいつもサボりに使う音楽室へと足を運んだ。
しかし、中に入ることはできなかった。
中から誰かがピアノを弾く音が聞こえて来たからだ。
そっと中を覗いてみると黒い真っ直ぐな短髪をかすかに揺らしながら楽しそうにピアノを弾く男子生徒の姿が見えて思わず固まってしまった。
「…すげぇ。」
本当にそう思った。
軽やかな聴いたことのない旋律が俺の耳を通って脳を刺激する。初めて見る男子生徒の姿が俺の心臓を一瞬にして捕らえた。
あぁ…綺麗だ。
本当にそう思う。
横顔しか見えないから彼の顔ははっきりとは分からないけれど、整った容姿をしてる訳では無い。
それでも楽しそうに口元を緩ませながらゆらゆらと体を揺らして音を奏でる姿は本当に綺麗だと思った。
俺はその日からちょくちょく音楽室の前の壁にもたれかかってピアノの音に耳を傾けるのが習慣になっていた。
行事や集会の時にはあいつの姿を探して、見つけるとついにやけそうになって真顔を保つのが大変になった。
あいつは俺とは反対の性格で、友達もあまりいないようだった。でもそれでもあいつのことを知っていくと段々と好きな気持ちが大きくなっていく。
俺は今日も同じようにピアノの音に耳を傾けていた。
けど、遂に堪らなくなって思わず中に入って拍手をしてしまったんだ。
直接この気持ちを伝えたいと思った。
「うまいな。」
早くなる心臓を静めながら精一杯に称賛の言葉を言う。
そうしたら目の前の想い人は顔を真っ赤にしてその場にしゃがみこむと、なにやらブツブツ言ってから立ち上がって音楽室から飛び出してしまった。
止める暇もなかった。
「……顔真っ赤っ…。」
白い肌が赤く染っているのを視界の端に入れて、その愛らしさについ呟く。
あいつにつられて俺も思わず顔を赤くしてしまった。
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