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その時ノックと共に入って来たのは、極上の笑みを浮かべた担当者さん。バックに般若の顔が見える気がする。
「お元気そうで何よりです江部先生」
「……あ、ハイ」
「締め切り、昨日だったんですよ。知ってました?」
「……存じ上げております」
「電話にも出ないし。編集長がブチ切れながら、『江部のクソ馬鹿凛子をここに呼べ!!』って怒鳴ってたので呼びに来ました」
「……知らない間に私に切ないミドルネームがついてる」
「今日から作品仕上がるまで缶詰です、編集部に」
「せめてホテルがいいです」
担当さんは親指をぐっと立てると、そのままクルっと下に向けた。
「さっさと支度しろ、クソ馬鹿」
「はい……」
逆らったら死神を呼ばれるパターンだ。私先生って立場のはずなのに権力が弱すぎるのは何でなんだ。ちなみにピラミッドの頂点は編集長。この人に逆らったらブッ殺である。
しゅんとしながら着替えをバッグに詰め込み、仕事道具を一式持つ。今はデジタル化が進んでるけど、私はアナログ派なんだよね。だから道具がそれなりに多い。アシスタントもいないからなおさらだ。開きっぱなしのノートパソコンを見ながら担当さんが大きなため息をついた。
「江部先生、漫画家なんだから小説書いてないで漫画描いてください」
「グウ正論」
END
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