ナツ。

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力を振り絞って起き上がる。 急がなきゃ。 さっきまでの状態が嘘のように走れる。 少し壁に体を擦ったけど、倒れなかった。 ぐちゃぐちゃになってるキッチンマットを避けて玄関マットの上に乗った時、ガチャンとカギの音がした。 いつもみたいに、扉が開くと笑顔でオレを見て抱き上げて頬擦りするんだろう。 オレも、いつもみたいに、しなきゃ。 扉が開く。 「ナツ!ただいま!」 ほら、いつも通りだ。 「にゃぁー……」 待ってたよ、おかえり。 今朝は返事しなくてごめんね。 視界が歪んだ。 「……ナツ?」 いつも通り抱き上げられる。 でもいつもと違って、手、あったかいね。 ……いや、違う。 オレの体が冷たくなってきてるんだ。
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