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「じゃあ行ってくるね、ナツ」
「にゃあ」
玄関の扉が閉まったあとのガチャンと締まるカギの音が嫌いだ。
さっきまでの温かくてほっこりした空気を一気に壊すから。
だけど、その音でオレは甘えん坊なペットの猫をやめる。
5年間その繰り返し。
『アキ、そろそろ見送りぐらいしなよ』
2年後輩のアキがベッドの下からのっそり現れた。
『だって眠いんだもん、ナツが玄関まで行ってくれるんだから、オレはいいよ」
ぐーっと伸びてあくびをするアキの横を通り、ひょいと出窓に飛び乗った。
『今日も大変そうだな、車動かすのって楽しいのかな』
『オレ車キライ、乗る時いつも痛いことされるし』
たしかに。
車に乗る時は病院に行く時くらいだ。
『それより遊ぼうぜ、今日はボールを2個同時に部屋の端から端まで転がすんだ』
『えー……今夜も話し聞くんだから体力回復したいよ、最近疲れるんだよね』
『あ、ナツ、負けるのがイヤなんだろ』
……この後輩猫、そろそろ噛みついていいかな。
良くないよな、喧嘩すると怒られるのオレだし。
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