24人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
本編
この世界には魔物がいる。
「陛下! 助けてください~!」
満月の夜空を一匹のドラゴンとそれにまたがる騎士が絶叫しながら飛んでいた。
彼はアルン。この国でただ一人の竜騎士だ。
そんな夜空を駆け回るドラゴンを、僕はボロ臭い城のバルコニーから見上げていた。
「アルン! 右からくるぞ!」
月の光に照らされて、黒い影が何体か空を飛んでいる。
彼らは魔物。
この世界に眠る数々の宝を求めて異界から侵略してきたらしい。
アルンは慌てて剣を構えると、ドラゴンの腹を蹴って方向転換させる。
「行け~! ロン吉(きち)~!」
なんとも間抜けな名前を呼びながら竜騎士は黒い影たちに斬りかかった。
アルンは次々と魔物を斬り殺し、ちりに変えていく。
声なき声をあげる魔物たちは、倒されると隠し持っていた僅かな金貨を地面に落としていった。
すべて倒し終わると夜空に平和が戻ってきた。
この日の襲撃はここまでらしい。
僕は急いでバルコニーを離れて、城の外へと飛び出した。
「陛下、今日は金貨が十枚も取れました! 明日はお肉が食べられますね」
最初のコメントを投稿しよう!