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「莉子は、大丈夫だったの?」
梨乃が口に定食の白米を口に入れ、それを飲み込むと、紗英に問う。
「うん。とりあえず、命に別状はないよ。でも学校には行ってない。太ももを宏輝に刺されて、それで来れないんじゃないかな?」
「そうなんだ…莉子は明日学校行けるかな?」
「わかんないけど、多分無理だと思う。気持ち的にもまだ外を歩けるようには思えないかな」
「悠人くんは?学校行ってるの?」
悠人と莉子が心配なのか、梨乃は立て続けに紗英に問う。
「悠人はいつも通り学校に行ってるよ。あの計画でほとんど怪我はしてない」
「そっか…」
梨乃は紗英が質問に答えると、何かを考えるように口元に手を当てた。
「梨乃…もしやりたいことが決まったら、私も力になるから。できることがあったら、なんでもいってね」
机に前のめりになって梨乃に優しく声をかけた。その言葉を聞いて梨乃が安心したように頬が緩んだ。
「ありがとう。紗英ちゃん、私なんかのために、いままで寄り添ってくれて。私、紗英ちゃんがいたからここまで生きてこれたんだよ。私は紗英ちゃんに救われたの」
紗英は急に真剣に話し出す梨乃に少し気恥ずかしさを感じて、思わず視線を逸らした。
「そんなことないよ。私なんかだなんて言わないでよ。同じ捨て子なんだから、支え合って当然だよ。だから、梨乃のやりたいこと、私にも手伝わせて」
紗英の言葉に梨乃はふっと息を漏らした。
「じゃあ、ひとつお願い」
梨乃は満面の笑顔を浮かべて紗英に微笑んだ。
「私の…莉子のことを、お願い」
紗英は梨乃のその言葉の意味が分からず首を傾げたが、梨乃はそれ以上説明を加えようとしなかった。
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