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RETRY! ―リトライ!―
二月も三週目を半ば過ぎ、三学期の期末テストも目前という頃合い。
立春が過ぎたとは言え、まだまだ寒い日が続いていたが、この日は珍しく暖かな日差しに心地良さを感じることができる日だった。
裏門からほど近い位置に建てられたクラブハウスの脇は、俺のちょっとしたお気に入りの場所。そんな場所でのお気に入りの過ごし方は、最新号のバイク雑誌を広げて仲良くなった上級生三人とお喋りすることだったりする。
龍先輩がおやつにくれた棒付きの飴を口に咥えて、雑誌のページをめくりながら「マフラーの素材が」だの「カウルのカラーが」だの、とりとめのない話をする。
時々太鳳先輩が「おもしろグッズを紹介するページはないのか」って言いながら無理矢理ページをめくり、それを朔夜先輩が怒り、龍先輩が半笑いで宥める、みたいなやり取りを繰り返す、他愛もない放課後のひととき。
そんな俺たちのところへ、とんでもなく真面目な顔をして現れた尚斗が開口一番、
「なんなのココ。不良の集まり?」
と言うなり眉を顰めた。
口に咥えた飴の棒が煙草っぽく見えるのも、座った姿勢がヤンキー座りと同じシルエットに見えるのもその通りだし、姫がそう言いたくなる気持ちもわかる。
「まぁー間違ってない? かな?」
「誰が不良だ。おい黎斗、お前も否定しろ。尚斗はすぐ信じるぞ」
朔夜先輩がしかめっ面で小突いてくる。そうは言うけど、だいたい朔夜先輩が悪いんじゃないかなって思うんだよね。この中で一番強面なの先輩じゃん。
「なおぴょんてさ、意外と純粋だよなぁ!?」
飴をガリガリ噛み砕きながら、太鳳先輩は「にゃはは」と独特の笑い声をあげる。元々細い目元が弓形に細まって、なんだろこれ、どっかで見たような……あー、あれだ。夕方のニュースの途中と終わりに出てくるお天気怪獣のそらタローだ。頭の中にモヤモヤと水色のずんぐりしたシルエットが浮かぶ。
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