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講習会から帰ってきた英治さんに事の顛末を話すと、「そういうことなら」と快く夕飯を用意してくれた。もちろん、全部任せるわけにはいかないから、他の三人が来る前に全員で手伝った。
イタリアンカフェらしく、メインはボロネーゼ、副菜はグリーンサラダ。
サラダを盛ったりソースを煮込んでいる間に「簡単だから」とティラミスを作り出した時は、「さすが料理人」としか言えなかった。しかもこれがまた美味いのなんの。
夕飯を終えてデザートと飲み物だけになったら、各々好きな位置に散らばる。ここからは食後の歓談タイムだ。
「──なるほど。それでみんなで集まってた、と」
「……うん。まさかこんな大袈裟なことになるとは」
「せめてMOINにしときゃ良かったのにね~。直談判しに来るから」
デザートのティラミスをつつきながら昭彦が笑うと、姫は「こうなった原因が全くわからない」という風に首を傾げながらコーヒーをひと口含んだ。
大袈裟になったって言うけど、直接頼みに来たからこうなったんだっつーのに。俺は姫の横顔をチラッと見て聞こえないくらい小さく溜息をこぼした。
「あの生チョコすごい美味しかったよ? 尚斗が俺のためにっていう気持ちが嬉しかったし……見た目なんて気にならなかったのに」
はにかみながらトモちんが言う。きっと当日貰ったチョコのことでも思い出してるんだろう。ほんのり頬に赤みがさした表情を上目遣いに見ながら、姫が眉を下げる。
この子たち、人前で惚気けてるって自覚あるのかね。
「男心は複雑なんだよ、トモちん」
「ねぇ、さっきから気になってたんだけど、その〝トモちん〟ってあだ名?」
「曇狼だからトモちん。可愛いっしょ? 太鳳先輩のるなるなより100倍意味通じてると思うけど」
「そっ……まぁそうだね」
俺の言葉に一瞬なにか言いかけたトモちんは、それをぐっと飲み込むように表情を消して、ティーカップに口をつけると紅茶を啜った。
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