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「姫乃井もおやつ食べる? いぶりがっこ味とコーンポタージュ味とイカスミパスタ味とハラペーニョ味があるけど」
ひとりだけ立ち姿勢だった龍先輩が、肩に提げていた鞄の中から数本の飴をまとめて取り出した。両手の指に器用に飴の棒を挟んで扇みたいに広げて見せる龍先輩を、怪訝な顔で見つめた姫は、
「飴っすよね……? なんでそんな微妙っつーか、罰ゲームみたいな味しかないんですか。龍之介さんって実は味覚ヘン……?」
そうバッサリ切り捨てた。
気心知れた仲とはいえ、先輩相手にココまでハッキリ言い切るのはなかなかに肝が座ってるな、なんて思う。
俺なら言わないね、おやつ貰えなくなったら嫌だし。
「失礼なー! これねー、いまSNSですっごい話題になってる百味ポップスってキャンディなんだけど、たまたまセルディ行ったら売っててさ、面白そうだから買ってきちゃった」
アイドルのファンサみたいにキメキメなウインクをする龍先輩を見て、姫の顔から表情がスッと消えていく。ここまで露骨な反応する姫も面白いな。ニヤニヤしながら成り行きを見守ってると、
「……ハラペーニョ味にします」
そうぽつりと呟く声が聞こえた。
ふぅ~ん、貰うには貰うのか。
にしてもハラペーニョ味って……わかってもらってんのかな?
「はいどーぞ」
ニコニコしながら龍先輩が姫に飴を渡す。グリーンの包み紙に黄色い文字で〝Jalapeño〟って書いてあるいかにもな飴を見て、姫が一瞬顔を引きつらせた。
そりゃそうだよね、そんな〝入るな危険〟みたいな文字書いてあったら誰だって躊躇うよね。防衛本能、防衛本能。
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