6人が本棚に入れています
本棚に追加
「……リア充爆発しろ」
「そう言うなって。尚斗が素直になってきてよかったじゃないか。少なくとも、最初の頃のとりつく島もなかった頃よりはよっぽどいい」
ほんの少しだけ妬ましそうに言う亮平の横で、昭彦が困ったように笑う。
同じクラスのよしみで、このふたりは俺と出会う前の姫を知ってるんだよなぁ。俺と出会った時はすでにこんなふんわりした感じだったから、なにがどのくらいどうだったのかは、想像もできないけど。
「そんなひどかったの?」
「ひどい、とは違うけど、自分の世界が強いヤツだったから。近寄らせないってより、見せることをしないっていうか? それが悪いわけじゃないけど、やっぱ同じクラスだし話くらいできたらってなるだろ? 尚斗からしたら「別にいい」って感じかもだけど。月冴と付き合ってなかったら、オレらともこんなに打ち解けてなかったんだろうなーって思うとさ、ふたりが付き合ってくれて良かったなって思うわけ」
温くなったコーヒーを飲みながら、昭彦がもともと細い目をさらに細めて姫の方を見る。
「アッキーって、実は姫に気があったり?」
ついそんなことを尋ねれば、
「え? ないけど」
めちゃくちゃいい笑顔で真っ向から否定される。
いやまぁ考え込まれても困るけどさ、そこまで速攻で否定することもなくない? ハッキリしてんなぁ……。心の中で溜息をついてると、
「……これ。トリュフ用の箱って、可愛いのが多いんだな……どれがいいか迷ったんだけどこれが一番月冴っぽいかなって」
そんな声が聞こえて。ちょっとだけ視線をテーブルの方へ向けると、姫がトモちんの方に箱を差し出しているところだった。
三つの小窓がついている小さい長方形の箱には、三匹のクマが描かれている。それぞれのクマが小窓を抱えるようにして横に座っている絵柄の、ちょっと珍しいやつ。赤とかピンクの箱に混じって一つだけ残っていたのを、姫自身が見つけたんだよね。なんていうか、運命なのかなぁ。
最初のコメントを投稿しよう!