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カサカサと音を立てながら飴の包みを開いて口に含むと、すっかり黙り込んだ。しばらく味わったかとおもったら目をまん丸く見開いて、ベッと舌先に乗せて飴を口の外へと押しやる。
「辛すっぱ……」
「うげっ」てより「うへぇ」みたいな顔をして、姫が眉をひそめた。どうやら相当不味いみたい。
「ハラペーニョって唐辛子だよね? ピクルスに加工された方の再現なんだ?」
龍先輩が鞄から飴の袋を取り出して成分表を見はじめる。
そういや姫って辛党なんだっけ……酸っぱさもあるならタバスコみたいなもんって思えば良いんじゃない? やっぱ別モンなのかなぁ。
「朔夜さんたちも変なの食べさせられてるの?」
先輩たちがキョトンとする。とっくに食べ終わってなにもついていない棒を見せて、
「……ステーキ味」
「オレっちはうなぎの蒲焼味だったぜぇ! ご飯欲しくなるよなー!」
口々にそう言う。飴食ってご飯欲しくなるってどうなの、みたいな顔で姫が先輩たちの顔を見る。そしてゆっくり俺の方を見て、薄っすら口を開いた。
「キタさ……」
「やっぱ棒付きキャンディっつったら、コーラが鉄板っしょ」
「………………」
聞かれる前に答えたらすんごい顔された。そりゃ俺だけアタリ引いてるのおかしいと思うよねー。だぁって変なの食べたくないし。未開封なら選び直しは当然の権利でしょ、うん。
「ところで、なんか用?」
いい加減しゃがんでるのも疲れたから立ち上がるなりすっかり忘れてた質問を繰り出す。
いままでもこうやって、放課後に先輩たちとお喋りしてたことはあったけど、その最中に姫が訪ねてくるのは今回が初めて。
ていうか、俺が姫のクラスに行くことはあっても、姫が俺のクラスに遊びに来ることは滅多に無い。
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