好きこそものの上手なれ

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「やんのかコラ」 「やるために来たんだろ、あ?」  とある廃工場の中、数十人が集まっている中心で睨み合っているのは互いのチームのリーダー。この街に存在するチームのヤンキーどもは、住民の迷惑になることはしない。と言うより、できない。だからこそ、この人気のない廃工場で喧嘩をしようとしている。 「やるぞ!お前ら!」 「おおおおおお!!!」  互いのチームのリーダーの掛け声と共に、全員が一斉に走り出す。が、 「ちょっと〜始まってるじゃ〜ん」 「キサが寝坊するから」 「…すまん」 「まぁ、今から始まるところみたいだからさ、間に合ったじゃん、ね?」  その場の空気に似合わない、学校で友達同士でしているような会話。今にも喧嘩を始めるという体制で、全員が止まっている。そして、声のした方を見ると、先程まではいなかったハズの4人組が入り口の前に立っている。 「誰だ!!」  今入ってきたのか? いや、扉が開いた音はしなかった。したなら気づいたはず。  じゃあ元からいたのか? それならもっと早く存在に気づいたはず。  なら、チームに紛れていたとか? なら逆に、今日、家族同然の仲間の中に見たことない顔なんていたか?いなかっただろ?  あまりにも突然に現れた存在に、全員が混乱している。見たままの情報は入ってくるのに、彼らが誰なのか、目的は何なのかを考えるまでに至らない。 (デカいのと、細いのと、ちっこいのが2人?) (なんだ?そろいの服に… 動物?あれは象だよな、馬に虎にライオン??) (リボンが統一のチームなんかあったか?それに、青に緑に黄色?) (動物も色も統一されていない…無所属のチームなんてまだいたのか?)  全員が混乱している様子が、面白いと言わんばかりに声をあげる。 「ははっ、皆コンランしてるねぇ!いきなりすぎたかな?ゴメンね!」 「邪魔するつもりはない。俺らは回収しに来ただけだ」 「…団長」 「団長がここにいるらしいんだけど、知ってるかな?」  聞いた事のあるフレーズで、やっと皆が理解し、ざわめきだす。 「団長ってことは、お前らはサーカスか!」 「嘘だろ!?都市伝説じゃなかったのか!?」 「団長がここにいる…!?あの、団長が…!?」  ここら一帯、自分らが慕う総長たちでさえも恐れているチーム、”サーカス”。その中でも異常と言われるあの団長が、いる。 「…ぁ、いた」  そう言い、デカい男が1人の男を見る。皆の注目がその男へと集中する。男は、唯一見える口元をピエロの仮面のようにニヤリと変形させる。 「ハハッや〜っト来たか。まぁいい、ちょうど飽きテきたところだ」
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