すべて、ネズミ

4/17
前へ
/91ページ
次へ
ーーー スペードの下っ端 side.  GWならサーカスも動くはずだとリーダーが言っていた。皆リーダーが大好きだ。だから、リーダーのためにサーカスを探しまわっている。  スペードは先輩後輩などはなく、実力主義だ。今のリーダーだって、実力でリーダーをしている。だからこそ、強さを求める俺らにとっては憧れで尊敬で、、、 「なぁ、スペードのたまり場ってここなのか?」 「あぁそうだ。お前ら新入りか」 「そう。俺ら本当は市外だけど、ここのチームがヤバいって聞いて仲間になりたいと思ってな」 「そうなのか。歓迎するぜ」 「ありがとう」  スペードは評判がいい。月に1、2回ぐらいの頻度で新しいチームが入ってくる。おかげでまだ顔を覚えていないやつも多いし、見慣れない顔があっても違和感がない。リーダーは所属チーム皆の顔を覚えているって話だが… 「また新入りが来たのか。スペードも大きくなっていくな」 「そうだな。我らがリーダーは俺らと歳が変わらないと感じないくらい器がでかいよな」 「顔を見たことなくても、この青いリストバンドでここ所属か見分けられるけどね」  新入りと入れ替わりで俺の元に来た彼は、そう言って手首を指さしてくる。  俺や彼の腕にはスペードの所属を示す青いリストバンドがはめてある。このリストバンドは幹部から渡される。リストバンドにしては質がいいからきっと良いとこのやつだ。幹部は皆坊っちゃんだという噂は本当なんだろう。 「おい!あっちの方で喧嘩やってるぞ!」  いきなり聞こえてきた声に、野次馬根性が半端じゃない奴らは真っ先に走って行く。ま、俺らも例外じゃないけど。 「喧嘩か、どうせまたハートだろ」 「ハートが売ってきたんだろうな〜」 「…見に行くだろ?」 「当たり前」  好奇心に勝てる者などいるだろうか。猫をも殺す?知らないね。  道路の方に人集りができている。中心で喧嘩しているのは、片方はスペードでもう片方は赤いチェーンをつけていることから、ハートの奴だとわかる。 「くそっ。ちょこまかしやがって!」  スペードの方がやや勝っているようだ。スペードの奴は小柄で動きが速いため、ハートの奴がなかなか攻撃を当てられない。 「ほぉ〜やってんねぇ」 「なかなかレベル高くねぇか?」  野次馬のテンションも上がってきた。 「いいぞぉ!」 「やれぇ!!!」  逃げていたスペードの奴も反撃し始め、かなり盛り上がってきたとき、野次馬の一部がざわざわとし始めた。 「なんだ?」  野次馬共が道を開けるとそこには、 「お前ら!!こんなところですんじゃねぇ!邪魔になってるだろうが!」  我らがリーダーがいた。
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

211人が本棚に入れています
本棚に追加