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「こんな道路のど真ん中でなにやってんだ」
リーダーはアジトに向かう途中だったようだ。
「あぁ?ハートとの喧嘩?別に買うぐらいは構わないが、道路でするもんじゃねえ」
街に迷惑をかけるな精神はこの人がリーダーになってから、前より徹底されるようになった。守らなかった者は、リーダー直々に制裁されるとか。
「もう喧嘩終わってるじゃねえか。ほらさっさと散れ」
え?と思い中心を振り返ると、ハートの奴の屍だけが落ちていた。スペードの奴の姿はどこにも見えない。
「どこ行ったんだ?お前見てたか?」
「いや、全然。あんな互角だったのに一瞬目を離したすきに倒せるってことは…」
「あの小さいヤツは力を隠していたと」
その場で野次馬をしていたやつらは皆首を傾げていた。
一瞬のうちに倒してどこへ行ったのだろう?どうして誰も見ていないのか。そこまで実力のあるヤツが、この実力主義のスペードでなぜ無名なのだろう?
再びリーダーから発せられた言葉に、そこにいた野次馬はどんどん散っていく。わずかな疑問はその場に残して。
しかし、同じようなことがその後も何度も続いた。
「またハートの屍が落ちてたらしい」
「今日で何回目だ?」
「それもまた小さい奴が倒したんだって?」
「あぁ。その場にいた奴らは皆目撃している」
「でも誰も見覚えはないんだろ?」
「アイツは何者なんだ?」
何度かハートとの喧嘩の情報が入って来るが、見に行った頃には屍だけが残っている。その場にいた奴らは相手がどこに行ったのか誰も見ていない。また、ハートには喧嘩を買うだけじゃないらしく、頻繁に目撃情報が入る。結局は逃げられるが。
そんな無名の話はすぐに広まり、喧嘩だけでも一目見ようと皆が探し始めた。
「すごいな。いくらハートとはいっても、アイツらは別に弱いわけじゃない。そんな相手と頻繁にやり合って未だに無敗」
「無名なのが本当に不思議だな」
「それにかなり数がいるスペードが探し回って見つからないとは」
「…サーカスみたいだな。この街の皆が探しているのに見つからない」
半年前からどのチームも探しているが、中々見つからないサーカス__
「そういえば、サーカスも最近姿を見せたらしいな」
「そうそう。姿を見せたかと思ったらチーム二つ消すし、レベルが違ぇよ」
サーカスなんてただの噂だと思っていた奴らも多かっただろう。でも、リーダーからの命令だから探していた。そんなとこか。
そしてやっと見つけたと思えばチームを潰していて…サーカスにしかできない芸だ。
「サーカスだけにってか」
「いや、心読むのやめようか」
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