すべて、ネズミ

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??? side.  太陽が沈み、空は暗く、辺りはすっかり夜の景色。眩しいネオンの灯りで一つの影が浮かび上がる。影が向かう先はもう使われなくなった廃工場。 「ふー…」  少し緊張した体を鼓舞して廃工場へと進んで行く。まぁ、昼ほどではないけども。  また今回もバカにされるだけかもしれない。しかし、今回こそマジなのかもしれない。一応仲間たちには何も言わずに来た。アイツらをあまり巻き込みたくない。  気づけば、工場の入り口まで来ていた。ドアは押したら簡単に開くようだ。俺は意を決してドアに手をかける。  ギィィィ  使われていない証拠の錆びた音。ゆっくりと開くドア。中は暗く、部屋の隅はほとんど見えない。一番奥なんて見えるはずもなく。  そこに、窓から月の光が入ってくる。少し明るくなった工場内。その時にやっと、五人の人影を視認することができた。 「よォ、やぁっと来たか。アレ?おひとりかい?なかま置いてきちゃったんだァ!アハハハッ、これは面白イ」  闇に目が慣れてくる。見えてくるのは、五人それぞれ違ったパーカー。象、虎、獅子、馬。そして残る一人はピエロをイメージさせる。他にも、目立つ所に結ばれているリボン。もちろん色は違う。  一人足りないが、スペードの一人としてサーカスを探していたときに教えられた特徴と一致する。 「あれェ?オぉ〜い、どうしたァ?なぁテキ、コイツ反応ないんだけド!」 「団長落ち着いて。この人は多分僕たちのこと信じてなかった部類じゃないかな?ホラ、団長って最近顔出してなかったからさ」 「あ〜そウいうことな」  理解が、追いつかない。会話から察するに、目の前にいる奴らは本物のサーカス、そしてピエロらしい。 「…確かに信じてなかったわ。あのスペードをもってしても見つけられない。サーカスの、それも団長サマが、このしがない不良に何の御用で?」  相手を刺激しないように、下手に出る。フードを深くかぶり、顔上半分の仮面?をしているおかげで口元しか見えないため、表情が読み取ることができない。 「あ、呑み込めタ?こノ状況を理解できタみたいだな。御用?そこまで大切な用がある訳ジャないが…選ばれたのが君だったってだけサ」 「選ばれた?何に?」 「俺のストレス発散相手☆」 「なっ…!」  状況に脳が追いつかなくても、厄介な相手に選ばれてしまった事だけはわかる。俺は早くあのメールの動画を消してもらいたいだけなんだが… 「逃げようとは思わないでね〜。君の目的の動画は俺たちが持ってるんだからさ! ついでに、君のお仲間たちにも場所送っておいたから!もうすぐ来るんじゃないかな?チーム皆で俺らの団長を倒してみてよ♪倒せたら動画も返すよ。ま、できないだろうけどw」  気配がしなかったハズの後ろから声がする。振り返るとそこにいるのは鼠、同じようなパーカーとリボンを見て、コイツもサーカスの一員だと理解する。  また団長(と思われる奴)を視界に入れ、腹に無意識に力を入れる。 「どっちにしろ、喧嘩はしなきゃいけないんだな…これでも隣町ではトップの方だ。簡単に勝てると思うなよ」 「ふふっソレはどーカな」 ??? end.
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