思い人

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「良かったじゃない! 朝のお天気キャスターなら出世じゃん!」 「いやぁ、朝も朝、4時からの番組だよ。観る人いるのかなあ……」  日曜日、由美が珍しく私のマンションに遊びに来ていた。私がクビにはならず朝の番組に移る事を喜んでくれた。  数日前に今度レギュラーが決まった番組のプロデューサーから連絡が来た。番組開始は朝の4時から。出社はまだ暗い夜中だ。 「早起きは修行で慣れてるからいいんだけど、電車がない。さすがに早過ぎて毛瀬に頼むのも悪いし……」 「自動車学校行ってるんじゃなかったっけ? 車通勤にすれば?」 「そうだね。頑張って通えば4月までには取れると思う」 「うん、そうしな。私もそろそろ勉強始めるから」 「そっか。じゃあしばらく会えないね」 「愛も特殊任務解かれて時間できたんだから色々頑張れば? 先輩との事とか」 「え」 「はっきりさせなさいよ」 「はっきりって……!」 「さぁて、勉強しなきゃ。じゃあね」  由美はさっさと帰って行った。台風のような女だ。先輩との事はっきりさせろっていったって、いったって……。どうしろっていうんだ。私から言うの? 「付き合ってください!」なんて、言えるわけないじゃん。やっぱり男の方から言ってもらわないと。  RRRーー  先輩からの電話だ!
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