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作法通りに手水舎で手を清めた。一応吐水口は龍の口だった。
(ミズノコ、龍だよ)
(カタチだけはね)
(やっぱり龍の気配はない?)
(龍なんていない。天狗もいない。神様さえもね)
ミズノコが言うのだ。間違いない。ならばこの神社は何を祀っているのだ?
神社によっては神様ではなく人間を祀っている神社もある。偉人を神と崇め祀ったり、恨みを遺して亡くなった人の怒りを鎮めるために祀ったりする事もある。ここもそうなのだろうか。だとしたら、誰を?
突然ですが霊視してもいいですか?
拝殿へと進み二礼二拍手一礼をした。そして参拝していると見せかけて私は奥の奥に祀られているであろう主祭神へと意識を馳せた。
「ウッ!」
電気がショートしたかのような衝撃が走った。どうやら鉄壁の結界が張られているようだ。私如きが破る事のできない完璧な結界だ。これを桜のお父さんが張っているとしたらかなりの術者だ。桜の父親だけある。
心の中で"チッ"と舌打ちをし、それでも何かないかとキョロキョロ周りを見た。
拝殿の幕には夕べ視た通り六芒星が描かれていた。他にないかとウロウロしていると、あった。石灯籠にも同じ六芒星が。夕べ一筆書きを覚えたばかりだ。試してみたくなった私は石灯籠の六芒星に指を付けなぞった。
「できたー!」
「あら、良く知ってますね」
「!」
振り向くとそこには桜がいた。白い着物にパステルグリーンの袴。髪は後ろでひとつに縛っている。
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